1.日本でもこの平成22年3月期から「特定会社」(連結財務諸表規則第1条の2)についてIFRSの早期適用が認められ、その第一号が日本電波工業㈱ということで話題になりました。
2.IFRSの特色は「原則主義」で、従来のような詳細かつ広範囲に規定された会計基準に準拠するのではなく、実務上は実態に応じた適正な処理を財務諸表の作成者である経営者の判断に委ねることが多くなっているところにあります。
3.減価償却費の算定方法を例にとってみましょう。
日本基準では上場会社でも著しい不合理がない限り、法人税法に定められた償却方法、耐用年数によって計上しております。
ところが、IFRSでは各会社のその固定資産の使用による経済的便益の「費消パターン」に基づき減価償却費の計算をすることになります。さらには「コンポートネント・アカウンティング」という発想も導入されました。つまり飛行機であれば「飛行機」と一括りするのではなく、それを構成する機体部分、エンジン部分に区分けし、あるいはもっと細分化して、それぞれの実態に合わせた耐用年数で減価償却費を計上する場合もあります。
また、日常的な運航状況、整備状況なども航空会社各社で異なることもあるでしょうから、同じジャンボジェット機を同じ時期に購入しても、区分けの方法も違いますし、耐用年数も違いますので、減価償却費は同じ金額にはならなくなってしまいます。同じ会社で同じジャンボジェット機でも費消パターンが異なれば耐用年数が異なる場合もあり得ます。
4.財務諸表の目的は広範な利用者に有用な情報を提供することにあります。
全日空の株を買うか、シンガポール航空の株を買うか迷っているときにこのように異なる方法で作成された財務諸表を比較して意味があるのでしょうか。
5.財務諸表の有用性を達成するためにIFRSでは財務諸表の作成責任者である経営者
に対し、「高度な倫理観」と「十分な説明責任」を負わせ、実務上の判断基準を開示し有用性を確保しています。
6.しかしながら実務的には現場レベルでは大変な作業が待ち受けているのではないでしょうか。