1.国際会計基準第11号「工事契約」
工事契約に関する収益及び純利益は工事期間、金額に関係なくすべて工事進行基準を適用して認識すべきであるとして工事完成基準を排除しており、さらに損失が見込まれる工事契約では、当該予想損失を進行度に応じることなく直ちに認識すべきであるとしています。
2.企業会計基準第15号「工事契約に係る会計基準」(平成21年4月以降の工事契約から適
用)
工事の進行途上においても、その進行部分について成果の確実性が認められる場合(工事収益総額、工事原価総額及び決算期における工事進捗度を、信頼性をもって見積もることができる場合)には、工事進行基準を適用しなければならない。
3.税法基準:長期大規模工事の請負に係る収益及び費用(平成20年度改正)
平成20年4月1日以後に開始する事業年度において着手する工事に強制適用
1.工事の請負の範囲にソフトウエアの開発に請負が追加
2.長期大規模工事に該当する要件が改正
要 件 工事期間 請負金額
改正前 2年以上 50億円以上
改正後 1年以上 10億円以上
※ 赤字工事であっても長期大規模工事に該当すれば工事進行基準が強制適用される。
4.税法基準:長期大規模工事以外の工事に対する工事進行基準の(任意)適用
平成20年4月1日以後に開始する事業年度において着手する工事に(任意)適用
長期大規模工事以外の工事でも、その目的物の引渡しがその着工事業年度後の事業年度となるものについては、工事完成基準でなく工事進行基準を適用することが認められています。この結果、工事期間が1年未満のものでも当該期間が事業年度終了の日をまたがるならば、損失が生ずると見込まれる工事についても工事進行基準を適用することができます。
5.会計・税務への影響
1.上場会社では、長期大規模工事について会計基準と税法基準とが大きく異なり、損益に与える影響が大きく、また税務申告事務も煩雑となる。
2.上場会社では四半期決算ごとに、工事の進行部分の成果の確実性を検証する(上記2.企業会計基準第15号適用)ことなり、四半期ごとに的確な損益管理が要求される。
3.税法基準では、長期大規模工事の要件に形式的に合致すれば工事進行基準が強制適用される。また、長期大規模工事以外の工事であっても一定の要件に合致すれば、工事進行基準を適用し工事進行部分に応じた赤字工事にかかる損失計上が可能となった。