平成21年12月22日に平成22年度の税制改正大綱が閣議決定され公表されました。今回の税制改正では、グループ法人税制の整備に関する項目が含まれています。
注目される項目として、100%グループ内(発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係)での資産の譲渡取引により生ずる譲渡損益を、その資産のグループ外への移転時まで繰り延べるといった重要な改正のほか、金庫株取引を利用した節税策に関する税制改正が挙げられます。今回は金庫株制度に関する改正について解説します。
現行の税制では、法人が所有する株式を発行法人に譲渡した場合、対価として受取った額のうち、発行法人の資本金等を超える金額は「みなし配当」として受取配当金の益金不算入の対象となるとともに、譲渡した株式の帳簿価額と発行法人の資本金等の差額は「譲渡損益」となります。
したがって、実質的には同一の取引により生じた損益であるにもかかわらず、これを二種類の益金と損金に区別したうえで、一方の「みなし配当」について益金不算入のメリットを享受しつつ、もう一方の「譲渡損失」を損金算入することを通じて節税が可能な制度となっています。
今回の税制改正大綱では、下記の2点の改正が含まれています。
1.100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しない。
2.自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度を適用しない。
これにより、平成22年10月1日以降、上記のケースについては、「受取配当金の益金不算入」制度の利用と「譲渡損益」計上ができないことが明らかとされました。
しかし、今回の改正により金庫株に関する税制が明確になり、節税とならないケースが明らかとされたことにより、金庫株制度自体が利用しやすくなったともいえます。