「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿著、2011 年刊)の中に
次のような記述がある。
『日本の企業であっても、採算が合わないと判断すれば日本市場を軽視もする。
たとえばゲーム会社・コナミは「諸般の事情」で『サイレントヒルホームカミング』
というホラーゲームの日本市場での発売を中止した。』
「諸般の事情」は、どのようなことかわからないが
『要するにそれだけの労力をかけて発売するメリットが日本市場にはなかった
ということなのだろう。コナミという日本の企業が、マーケット規模が大きく、
ゲーム流通や規制的にも条件のいい欧米で優先的にモノを売るのである。』
このミニかわら版の筆者である私には最近のコナミの業績を考えるとこの戦略が
適切かどうかはコメントできないが、長期的に見ると、
日本は人口が減少して行き、新興国の所得水準の向上により、
相対的に日本の所得水準は低下していくことも相まって人口比以上に
日本の市場規模はその存在感を薄めて行くことと思う。
グローバルに展開しているという日本の企業でも、人件費のコストの低い国、
地域を生産拠点とし、各国へ輸出しているように見えても、
主たる輸出先国は日本であり、日本を最大の市場としているケースがあるが、
これは過渡的なビジネスモデルであるのかも知れない。
グローバルな展開をして行く企業は、市場の規模、為替動向、各種規制の有無、
人材確保等の諸要因により、企業機能を分散していくと思う。
2013 年4 月~9 月期は、概して好調な業績と伝えられているが、
その主因は円安や、海外事業によるところが大きく、また連結決算では
海外事業の円換算が上昇することにより利益がかさ上げされる。
勿論、海外事業収益の国内への送金還元はドル建て等であれば、
実質的な利益の増加ともなる。
しかしながら、日本を利益の源泉地国とする事業分野がないと日本の雇用、
賃金を守ることは難しく消費市場としても、そして内需喚起といわれても
展望を拓くことは難しい。
モノづくりを大切にしてきた、
そして、そのような分野に長けている日本人にとって期待される事業分野は
既存の技術、新しい技術をインテグレードすることかも知れない。
11 月の日本経済新聞の記事の
「都市型鉄道日本流を輸出」(定時運行ノーハウ提供)、
「日立とGE が目指す変革」(サービスが開く新製造業)、
「ニッポンの製造業、新たな挑戦」(東レ、ものづくり生態系進化)等の記事に
明るい曙光を感じた。