2008年4月より適用された内部統制報告制度(いわゆる日本版SOX法)も3年目に突入し、2010年3月期決算の企業から、2回目の内部統制報告書が提出されました。
提出された内部統制報告書は、2,600社で、このうち『有効でない』と表明した会社は、22社で、全体の0.8%でした。1年目は、2,676社中、『有効でない』と表明した会社は、62社となっており、全体の2.3%でしたので、重要な欠陥を識別した会社は、大幅に減少したと言えると思います。
重要な欠陥を識別した会社22社について、どのようなプロセスで重要な欠陥が識別されたのかを見てみると決算・財務報告プロセスに起因するものが14件と一番多く見られます。その後、全社的内部統制、その他のプロセスに起因するものと続きます。IT全般統制を原因とする報告書が1年目は、1件あったのですが、2年目は0件となりました。
個別に内部統制報告書の内容をみてみると、以下のようなものがありました。
・連結子会社おいて経営者による取引実体のない売上の計上や売上計上時期の前倒しなど不適切な経理処理が行われていたことが判明
・有価証券報告書の作成過程等において、決算・財務報告プロセスの不備を原因とする多くの誤謬を監査人に指摘され修正
・決算・財務報告プロセスにおいて、決算処理業務に係る内部統制の整備及び運用が不十分であったため、重要な修正を行うことになった。
内部統制の評価時点である期末日以降に監査法人から誤りを指摘されたために、内部統制書で、内部統制を非有効と表明している会社が数多く見られます。また、経営者や子会社や従業員により不正等が行われたために内部統制を非有効としている会社も散見されます。
金融庁の企業会計審議会内部統制部会でも、内部統制の導入状況について検討が行われています。公表されている情報は、案の段階ですが、
1)中小・中堅上場企業に対する簡素化
文書化の負担を軽減するためにメモなどの文書でも可など
2)制度導入2年目以降に可能となる簡素化・明確化
前年度有効であり、大きな変更のない事業拠点を対象範囲から外すなど
3)『重要な欠陥』という用語の見直し
などが議論されています。
形式的に、内部統制報告制度を維持するのではなく、会社にとって有用な内部統制の整備・運用を促進する方向で検討してほしいと思います。